先輩医師からのメッセージMessage

留学体験記Study abroad journal

国内留学

三好直人先生2021年入局

私は、2024年4月から2024年9月まで週1日の診療業務と、2025年4月から2026年3月までの1年間、レジデントとして勤務し、計1年半にわたり国立成育医療研究センターで研修させていただきました。
成育は国内有数の小児専門医療機関であり、総合病院や大学病院でも診療が困難な小児特有の先天性疾患や希少疾患の患者さんが全国から集まる施設です。そのため、大学病院で培った知識や技術だけでは通用しない場面も多く、私にとってはまさにゼロからのスタートでした。
1週間のスケジュールは、外来が週3日、手術が週2日です。手術では、鼓膜チューブ挿入術、鼓室形成術、人工内耳植込術といった耳科手術に加え、気管切開、肋軟骨を用いた喉頭気管形成術、声門上形成術、先天性後鼻孔狭窄症に対するステント留置術などの気道手術まで、幅広い症例を経験することができました。特に気道狭窄などの緊急症例を数多く経験できたことは、気道の緊急性判断や迅速な外科的対応能力の向上につながり、非常に大きな学びとなりました。
外来診療では一般外来に加え、補聴器外来、遺伝外来、嚥下外来、口蓋裂チーム外来などの専門外来も担当しました。また、呼吸器科・麻酔科・集中治療科・総合診療科との合同気道カンファレンスや、STカンファレンス、総合診療科カンファレンスなど、多職種・多診療科との連携の中で学ぶ機会も多くありました。慢性疾患を抱える小児患者さんに対しては、医療だけでなく社会的支援の重要性や、現状の課題にも直面し、医療の在り方を改めて考えさせられました。
成育での研修を通して得られたものは、専門的な知識や手技の向上だけではありません。特に強く感じたことが二つあります。
一つ目は「やりがい」です。元気に退院していく子どもたちの姿、手術後に声を出せるようになり嬉しそうに話してくれる姿、そして安心されたご家族の表情を目にするたびに、この仕事の意義を強く実感しました。経過フォローの中で子どもたちの成長を見守ることができるのも、小児医療ならではの喜びだと感じています。
二つ目は「視野の広がり」です。外の環境に身を置くことで、初めて気づく価値観や考え方がありました。また、診療部長のご配慮もあり多くの先生方とご縁をいただき、学会などでもつながりが広がりました。こうした人との出会いは、自身の成長にとって大きな財産であり、日々の診療へのモチベーションにもなっています。
昭和医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座では、国立成育医療研究センターでの国内留学にとどまらず、海外を含めた多様な施設で学ぶ機会が用意されています。自ら外に出て挑戦し、成長できる環境が整っています。
耳鼻咽喉科は、命に直結する気道管理から、聴覚・音声・嚥下といったQOLに深く関わる機能まで、非常に幅広い領域を担う診療科です。決して平坦な道ばかりではありませんが、その分だけ得られる達成感と喜びは大きいと、私はこの研修を通して実感しました。
少しでも興味をお持ちの方は、ぜひ一度見学にお越しください。現場の雰囲気や医局員の姿を実際に見ていただくことで、ご自身の将来像がより具体的になるはずです。皆さまと共に耳鼻咽喉科医として成長できる日を、心より楽しみにしております。

甘利泰伸先生2018年入局

私は2020年4月から2021年3月まで毎週水曜日の外来や手術の見学、2021年4月~2022年3月までは1年間のレジデントとしての勤務、計2年間国立成育医療研究センターで研修させていただきました。成育医療研究センターは小児医療に特化した総合病院であり、診療活動だけでなく医学研究も盛んに行われております。小児に特有の症候群や希少疾患など、一般的な総合病院では対応が困難な患者さんも全国から紹介受診される環境でした。
成育での1週間は外来が週3日、手術が週2日といったスケジュールです。手術は耳科手術(鼓膜tube留置術から鼓室形成術、人工内耳植込術など)や気道手術(気管切開、肋軟骨を用いた喉頭形成術、声門上部形成術、先天性後鼻孔狭窄症に対するステント留置術など)が多くあり、多様な手術における解剖や手技を学べます。
外来業務は一般的な初再診に加えて補聴器外来や遺伝外来、嚥下外来、口蓋裂チーム外来などの専門外来もあります。私がもともと成育への留学に興味を持ったきっかけは「難聴児の外来診療を学びたい」でした。難聴児に対する聴力検査についての考え方や伝え方、介入方法など自分が今まで大学で培った知識を更にブラッシュアップすることが出来ました。実際にこれらを現地で触れ、患児や家族と話し向き合ったことで得られるものは確かにあったと感じています。
知識の吸収、手技の習熟に関してはもちろんですが、留学で学ぶことが出来る、得られるものはこれだけではないと思っています。1つだけ挙げさせて頂きますと、全国の先生方との関係ができることは外せません。成育は文字通り日本中から先生方が集まっていて、北は北海道から、南は広島の先生もいらしていました。皆さん気さくな先生方なので、日常診療のことから他愛もない話などで盛り上がることもよくあります。その中で一つの疾患に関しても、それぞれが育った環境が異なることから様々な意見や見方があることを学びました。また先日開催された学会では、同じ時間を過ごした先生方と久しぶりにお会いしました。なにも仕事の話だけである必要はなく、当時の話やプライベートな話、笑い話までできる間柄の仲間ができることはとても素晴らしいことだと感じています。今までの自分からすると他院の先生と知り合うことは難しいと考えていましたが、また学会に参加するモチベーションとすることが出来ました。
昭和医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座では成育だけでなく海外も含めて様々な施設で学ぶ機会が得られます。昨今はめまぐるしく価値観が移り変わり多様性を重視する世の中ではありますが、皆さんのニーズに可能な限り寄り添ってくれる医局だと思います。まずは見学だけでも雰囲気が伝わると思いますので、是非ご連絡をお待ちしております。

北嶋達也先生2016年入局

2018年8月から2020年7月までの2年間、国際医療福祉大学病院頭頸部腫瘍センターで国内留学として研鑽をつませていただきました。三田病院頭頸部腫瘍センターでは頭頸部癌における再建手術を中心に様々な経験を積ませていただきました。また最近では化学療法については腫瘍内科や頭頸部内科といった科が行う施設が増えてきていますが、三田病院では術前術後の化学療法などを一貫して頭頸部腫瘍センターで行っています。ここ数年はオプジーボをはじめとする免疫療法が頭頸部領域でも使用可能となったことから頭頸部癌に対する治療方針はより複雑になってきています。2年目からは一部外来業務も担当させていただき、診断から治療までの業務を担当させていただきました。
今回の国内留学の一番の目的は再建手術の研鑽であり、2年間継続的に週2件の再建手術に関わることは当施設でなければ経験することのできないものであったと思います。前腕皮弁や腹直筋皮弁などの皮弁挙上をはじめ、咽喉食摘や舌癌をはじめとした口腔癌の術者として研鑽をつませていただけたことは非常に貴重な経験でした。また学会や講演会で講演される先生方の手術を身近に経験させていただいたことは今後の頭頸部外科医としての基礎となり、貴重な経験であったと感じています。2年間はあっという間の時間でしたが、大変な時期も多く長い2年間でもありました。
このような施設に留学させていただく機会をいただいた嶋根俊和教授、小林一女教授、および諸先生方に心より感謝申し上げます。

海外留学

志村智隆先生2013年入局

私は2023年6月より2026年3月まで、米国中西部ミネソタ州にあるUniversity of Minnesota に研究留学させていただきました。
University of Minnesotaは1851年創立の州立大学であり、医学・工学をはじめとする多分野で世界的な研究実績を有しています。私が所属したPaparella Otopathology & Ear Pathogenesis Laboratoryは、1967年に故Michael Mauro Paparella教授によって設立された研究室で、世界有数のヒト側頭骨標本コレクションを有しています。前々任の野垣岳稔先生・前任の竹内美緒先生に続き、同研究室への50人目の日本人リサーチフェローとなりました。
私は主に、耳硬化症における病変進展パターンや、蝸牛型耳硬化症における蝸牛内病変の組織学的評価をテーマに研究を行いました。ヒト側頭骨標本を用いて、耳硬化症に伴う蝸牛内の微細な病理変化を定性的・定量的に評価し、画像所見や臨床像と結びつけることで、疾患理解の深化および蝸牛インプラント手術における臨床的知見への橋渡しを目指しました。
さらに、長期罹患糖尿病が中耳構造へ及ぼす影響の検討、先天性内耳奇形症例の側頭骨病理の概説、前任の竹内先生との共同研究として頭部外傷が前庭有毛細胞に及ぼす影響の解析など、複数のテーマに取り組みました。
私自身、これまで耳科学手術を専門としてきたわけではなく、側頭骨研究も初めての経験でした。そのため、留学当初は研究計画の立案から標本評価法の確立まで試行錯誤の連続でした。ヒト病理標本を扱う研究では、正常解剖や他疾患との比較を含む基礎的知識の積み重ねが不可欠であり、適切に検鏡できるようになるまで多くの時間を要しました。しかし、この過程で得た解剖学的理解や病態把握は、現在の臨床診療においても大きな財産となっています。
指導教官であり恩師でもあるSebahattin Cureoglu教授、研究メンターであり大切な友人でもあるRafael Monsanto博士、Nevra Keskin博士をはじめ、ラボの仲間たちの支えのもと、かけがえのない3年間を過ごすことができました。
研究を進める中で、改めて感じたのは、多くの方との議論や協力があってこそ新しい発見にたどり着けるということでした。異なる専門性を持つ同僚や他施設の研究者との対話を通じて視野が広がり、自分一人では思いつかなかった発想に触れることができました。そうした環境で研究に向き合えたことも、留学生活の大きな魅力の一つでした。
こうした経験を通して感じた、Paparella Otopathology & Ear Pathogenesis Laboratoryでの留学生活の魅力について、いくつかご紹介したいと思います。

Paparella Otopathology & Ear Pathogenesis Laboratoryでの留学生活の魅力

  1. 集中して研究・論文作成に取り組める環境
    ヒト側頭骨病理は、日常診療で遭遇する難聴やめまいの病態を実際の組織所見から検証できる分野です。大規模なヒト側頭骨コレクションを有する研究室は世界的にも限られており、臨床で抱いた疑問を病理学的に確かめることができる環境は非常に貴重です。既存のHE標本を用いた研究が中心であるため、明確なテーマ設定ができれば、限られた留学期間でも十分に成果を挙げることが可能です。
  2. 国際的な人的ネットワーク
    国際学会での発表や日常の研究活動を通じて、世界各国の研究者と交流する機会に恵まれました。異なる文化や研究背景に触れることで、自身の研究観や価値観は大きく広がりました。帰国後も続く人的ネットワークは、今後の研究活動において大きな財産となっています。
  3. 自律的に時間を設計できる環境
    研究を自分のペースで進めながら、必要に応じて同僚と議論し、関心に応じた学びを深めることができます。研究と向き合う時間は、自身を見つめ直す貴重な期間でもありました。特に、Nevra Keskin博士との共同研究として、ヒト側頭骨標本とラットやチンチラなど小動物標本を比較検討した中耳炎研究は、非常に印象深い経験でした。

留学は決して特別な人だけの選択肢ではありません。日々の診療の中で「なぜだろう」と考える姿勢があれば、その延長線上に研究があります。昭和医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室には、その挑戦を支える土壌があります。
臨床も研究も、決して特別なものではなく日々の積み重ねだと考えています。
志を同じくする皆さんと、一緒に歩んでいけたら嬉しく思います。

竹内美緒先生2014年入局

私は2018年10月から2020年9月まで、アメリカの中西部に位置するミネソタ州にあるUniversity of Minnesota(ミネソタ大学)に留学させていただきました。University of Minnesotaは1851年に創立され、18学部/135専攻科目を有する総合州立大学であり、医療・理工学の研究実績でも有名です。
私が所属していた研究室Otopathology laboratoryは、1967年に世界的にも有名な耳科学のスペシャリストMichael Paparellaが開設した全米有数の側頭骨病理の研究室です。1700を超えるヒトの側頭骨標本を有しており、研究材料の宝庫です。今までに200人以上の世界各国からの留学生が留学しており、前任者の当講座の野垣岳稔先生に次いで私が49人目の日本人留学生でした。Dr. Cureogluのご指導の下、「頭部外傷の側頭骨病理」について研究し外傷後の難聴・めまいの原因を推察いたしました。ヒトで頭部外傷後の蝸牛・前庭の病理学的変化について解析した論文は未だ珍しく、先行研究が少なく苦労しましたが、その分やりがいがあり、論文がacceptされた時の達成感は未だに忘れられません。
私の場合、側頭骨病理に触れることはもとより、研究自体をアメリカで初めて行った身でありましたので、研究のプランニングを行うだけでも非常に苦戦しました。恥ずかしながら、解析する標本の選出に半年近く時間を要しました。研究をすすめる上で、正常例や他の耳疾患の側頭骨解剖・生理から学ばなければなりませんでしたが、これらの知識は臨床に戻った後も役に立っております。また、病理標本の解析は自分一人では判断に悩むケースが多かったのですが、上司のCureogluや同じ時期に在籍していたresearch fellow達とディスカッションを重ねることで結果を出すことができました。私の研究は一人では絶対に達成し得なかったことであり、ラボのスタッフには多いに感謝しております。
ここで私が思う留学生活の魅力を紹介いたします。

  1. 側頭骨病理の研究は限られた留学期間中でも成果を出しやすい:すでに染色されたヒト側頭骨の標本が研究室には多数あるため、自分である程度標本を観察できるようになれば自力で研究を進めることができます。私のような耳科学初学者からベテランの先生まで、研究を通して様々な発見ができ、論文を作成できる点は大きな魅力と考えます。
  2. かけがえのない出会いが待っている:研究者仲間は然り、様々な国籍の方、異業種の方など日本の生活では会えない方々と出会い、多様な考え方に触れることができます。私自身も非常に多くの刺激を受けました。そしてOtopathology lab出身の研究者の同窓会をはじめ、日本に帰国してからも繋がっている方が多数います。
  3. 自分で自由に時間に使うことができる:研究を自分のペースで進めつつ、大学の英語授業を受けたり、手術見学やdissectionを行ったりと自由にスケジュールを組むことができます。アメリカの広大な自然を満喫するために休日は旅行し、サイクリング・ランニングをはじめアウトドア活動にも打ち込みました(ミネソタで購入した自転車は、現在日本でも愛車として活用しています)。外国人向けのJapanese festivalなどのイベントにスタッフとして参加したことも良い思い出です。

私の留学体験記を読み、少しでも留学に興味を持っていただけたら幸いです。このような人生を豊かにしてくれる留学の機会を得ることができる昭和医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室への入局を心よりお待ちしております。

洲崎勲夫先生2011年入局

私は耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座に入局して3年間の後期研修を経たのちに、米国Virginia州の州都Richmondにある Virginia Commonwealth University (VCU)のPediatricsに2年間留学しておりました。VCUは1838年に創立された総合州立大学で、Virginia州で3番目に大きな大学です。研究に重点を置く大学として知られ、大学院では芸術学部 (彫刻)と保健管理学部が全米トップレベルの評価を受けています。
私の所属していた研究室Mucus LabのPrincipal Investigator であるBruce K. Rubin 教授は小児科医で、嚢胞性肺線維症や喘息といった慢性気道炎症性疾患の病態解析、線毛クリアランス研究などがご専門です。日本からは主に呼吸器内科の先生が留学されており、私も喘息を中心とした上・下気道の炎症性疾患を研究対象として、主にIL-13、上皮細胞、periostinといったテーマを中心に基礎研究を行っていました。臨床医としてのキャリアを積む中で基礎研究に触れる時期をもつことは、臨床で感じる疑問を基礎研究に基づく視点で検討する思考を得る、貴重な機会になりました。また逆に、基礎研究で得た知識を臨床に活かすことで、より深い病態の理解や患者様への根拠のある説明にもつながるのではないかと思います。新しい「引き出し」を持つことで、より耳鼻咽喉科頭頸部外科医としての仕事を楽しむ幅が広がったと思っています。
留学に行くタイミングは医局や個人の事情により異なると思いますが、チャンスがあるのであれば逃さず果敢にトライしてもらいたいと思います。このような機会を得る環境が昭和医科大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座にはあります。将来、当講座でみなさんと一緒に働けることを楽しみにしています。