私は2018年10月から2020年9月まで、アメリカの中西部に位置するミネソタ州にあるUniversity of Minnesota(ミネソタ大学)に留学させていただきました。University of Minnesotaは1851年に創立され、18学部/135専攻科目を有する総合州立大学であり、医療・理工学の研究実績でも有名です。
私が所属していた研究室Otopathology laboratoryは、1967年に世界的にも有名な耳科学のスペシャリストMichael Paparellaが開設した全米有数の側頭骨病理の研究室です。1700を超えるヒトの側頭骨標本を有しており、研究材料の宝庫です。今までに200人以上の世界各国からの留学生が留学しており、前任者の当講座の野垣岳稔先生に次いで私が49人目の日本人留学生でした。Dr. Cureogluのご指導の下、「頭部外傷の側頭骨病理」について研究し外傷後の難聴・めまいの原因を推察いたしました。ヒトで頭部外傷後の蝸牛・前庭の病理学的変化について解析した論文は未だ珍しく、先行研究が少なく苦労しましたが、その分やりがいがあり、論文がacceptされた時の達成感は未だに忘れられません。
私の場合、側頭骨病理に触れることはもとより、研究自体をアメリカで初めて行った身でありましたので、研究のプランニングを行うだけでも非常に苦戦しました。恥ずかしながら、解析する標本の選出に半年近く時間を要しました。研究をすすめる上で、正常例や他の耳疾患の側頭骨解剖・生理から学ばなければなりませんでしたが、これらの知識は臨床に戻った後も役に立っております。また、病理標本の解析は自分一人では判断に悩むケースが多かったのですが、上司のCureogluや同じ時期に在籍していたresearch fellow達とディスカッションを重ねることで結果を出すことができました。私の研究は一人では絶対に達成し得なかったことであり、ラボのスタッフには多いに感謝しております。
ここで私が思う留学生活の魅力を紹介いたします。
- 側頭骨病理の研究は限られた留学期間中でも成果を出しやすい:すでに染色されたヒト側頭骨の標本が研究室には多数あるため、自分である程度標本を観察できるようになれば自力で研究を進めることができます。私のような耳科学初学者からベテランの先生まで、研究を通して様々な発見ができ、論文を作成できる点は大きな魅力と考えます。
- かけがえのない出会いが待っている:研究者仲間は然り、様々な国籍の方、異業種の方など日本の生活では会えない方々と出会い、多様な考え方に触れることができます。私自身も非常に多くの刺激を受けました。そしてOtopathology lab出身の研究者の同窓会をはじめ、日本に帰国してからも繋がっている方が多数います。
- 自分で自由に時間に使うことができる:研究を自分のペースで進めつつ、大学の英語授業を受けたり、手術見学やdissectionを行ったりと自由にスケジュールを組むことができます。アメリカの広大な自然を満喫するために休日は旅行し、サイクリング・ランニングをはじめアウトドア活動にも打ち込みました(ミネソタで購入した自転車は、現在日本でも愛車として活用しています)。外国人向けのJapanese festivalなどのイベントにスタッフとして参加したことも良い思い出です。
私の留学体験記を読み、少しでも留学に興味を持っていただけたら幸いです。このような人生を豊かにしてくれる留学の機会を得ることができる昭和医科大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学教室への入局を心よりお待ちしております。